2.租税法上の資産評価

 法人でも個人でも、確定申告をする上で自己が所有する資産について評価替えを必要とする場面があります。特に相続や贈与が行われた場合には、その被相続人や贈与者が所有していた資産をどのように評価するかが問題となります。これは、その資産の評価が、納付すべき税額に大きく関わってくるからです。所得税、相続税、法人税の資産の評価について、その規定を見てみると(評価に関する条文を一部抜粋)次のようになります。

所得税法第59条 その事由が生じた時に、その時における価に相当する金額により

相続税法第22条 当該財産の取得の時における時価

法人税法第33条 事業年度終了の時における当該資産の価額

 いずれも、ある事象が生じた時には、その資産の評価は「時価」、つまりその時点における公平な価額を評価額としています。特に相続税法上では、相続財産の価額は「その取得の時における時価」と規定し、いわゆる時価主義を採用しています。そして、財産評価基本通達において、その評価の方法を詳細規定しているところに特徴があります。一方、所得税法や法人税法は、条文上は資産の評価について「時価」を規定しているようにも取れますが、実際上、その「時価」をどのように算定するかについては、詳細に規定されていません。そこで、所得税法上も法人税法上も、「課税上弊害がない限り、相続税の財産評価基本通達により算定した価額と認める」と通達上で規定しています。しかし、所得税法及び法人税法並びに相続税法は、同じ租税であってもその目的を異にするものであり、相続税法上の評価方法を所得税や法人税にそのまま適用することについて問題は生じないのか、疑問は残るところです。合理的な評価方法であれば、通達によらずとも納税者の資産評価を尊重すべきであると考えます。