3.相続時精算課税制度と相続放棄
相続時精算課税制度は、被相続人から生前に相続財産となるものを贈与してもらうことです。財産の価額が2,500万円以下ならば贈与税が発生しませんが、相続時には贈与した時点での財産額を相続財産に加算する必要があります。ここで問題となるのが、相続時精算課税制度を適用した後、相続時に相続放棄することが可能であるか否かです。この場合、生前に贈与された財産についても放棄しなければならないと思われるかもしれませんが、相続放棄しても生前に贈与された財産については、既に所有権は相続人(受贈者)にあるので贈与を受けていても相続放棄は可能です。
ただし、相続時精算課税制度を適用する時点で、贈与者(被相続人)が既に債務超過状態にあり、贈与者の債権者からの請求を故意に免れるための贈与は詐害行為取消権により、贈与自体を取り消される可能性がありますので注意が必要です。また、他の相続人との争いにならないためにも、相続時精算課税制度を適用して贈与する場合は、家族間である程度の確認を書面でとっておくことが賢明です。
相続放棄をしたとしても、相続時精算課税制度を適用して受けた財産については、相続税の対象になりますので、相続税の申告・納税義務があります。また、相続時精算課税制度を適用した場合、小規模宅地等の特例は使えないので特に注意が必要です。