23.増税
最近の会計検査院が見直しを求めているものは、納税者にとって不利な「増税」を促しているように見えます。以下2つ列挙します。
1. 住宅ローン減税
金融機関へ支払う利息より「住宅ローン減税」控除額が大きい「逆ざや」。
住宅ローン減税は毎年末の住宅ローン残高が基準となるので、減税期間中は繰り上げ返済でローン残高を減らさない方が得になります。
この「逆ざや」問題は、会計検査院が指摘したうちの一つです。内容としては、「住宅ローン減税については、本来はローンを組む必要がない人が組んだり、繰り上げ返済をしなくなったりする動機になる」と問題視しました。この問題提起には疑問が残ります。住宅ローンを申し込んだり、繰り上げ返済をするかしないかは、国民(納税者)の自由です。この指摘を受けた政府は、税制改正で、控除率1%を0.7%にしてしまい、結果として、「増税」となりました。
会計検査院は所見で、
「税制改正要望の際や政策評価法に基づいて行う政策評価の際の検証の中で、住宅税制租税特別措置の検証の内容を一層充実することにより、政策の実効性を高めていくとともに、適用実績の把握等に努めるなどして、適用実態等からみて国民の納得できる必要最小限のものとなっているかなどの検証を行うことが望まれる。そして、住宅税制租税特別措置の有効性について国民に対する説明責任を果たしていくことが肝要である」
としました。国民(納税者)に対して説明責任を果たすのは、政府ではなく、会計検査院ではないでしょうか。
2. 非上場株式の評価
税法上、非上場株式の原則的な評価方式は次の3つです。
A.事業などが類似する企業と比べて評価する「類似業種比準方式」
B.会社の資産や負債に基づいて算出する「純資産価額方式」
C.AとBの「併用方式」
法人の規模によって、どの方式を適用するかが異なり、大規模法人はAを、小規模法人はBを、中規模法人はⅭの方式で評価するのが一般的です。
大規模法人は類似業種比準方式を適用するのは当然です。税法上、認められた方法に基づいて納税者は評価し、申告しています。
今回、会計検査院はAとBの評価方式の違いで評価額がどれほど変わるかを調べたようです。その結果、法人の規模が大きいほど、純資産価額方式での評価額に比べ、申告された評価額が低く算定される傾向もわかったようです。
当たり前の結果です。なぜならば、納税者は、税法上認められた評価方法に則って、評価し、株価の低い方を採用し申告しているからです。
つまり、相続や贈与があった場合に株価評価をするとき、大規模な法人は、類似業種比準方式で算定したほうが、非上場株式の評価が下がり、相続税負担(贈与税も)が軽くなります。
会計検査院は国税庁に対し「(会社の規模区分によって)取引相場のない株式を取得した者の間での株式評価の公平性を考慮するなどし、評価制度のあり方が適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要」と指摘しました。
これを受けて、もし国税庁が見直しをすると、結果として、今よりも「増税」となります。
会計検査院は、国会や裁判所に属さず、内閣からも独立した憲法上の機関です。
そもそも、会計検査院は、税金や国債の発行で集めた金が「適切に使われているか?」をチェックする機関です。会計検査院が指摘した相手側は、政府(国税庁)であり、かつ、税金が適切に使われているかではなく、税金の徴収の前段階の課税所得計算(非上場株式の評価方法や住宅ローン減税の控除率)が正しいかどうかまで踏み込んで指摘しています。税金の使途ではなく、徴税の方法に目を向けていること自体に、個人的には違和感があります。