20.不確定概念の考え方
役員退職給与金額の相当性
役員退職給与は、企業会計上は費用として計上されます。法人税法上も、原則としては損金算入が認められていますが、租税回避防止の要請等から、その金額のうち過大とされるものについては、その部分の金額の損金算入を認めないと規定しています。つまり、不相当な部分(過大部分)については、損金算入できないということです。
政令では、「内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額。」つまり、当該規定に相当する部分の金額は、損金の額に算入されないことになります。この規定は、退職給与金額の相当性を判断する実質的な基準を示していると言えます。
しかし、『相当であると認められる金額を超える部分は損金の額に算入しない』という文言が踏襲されており、不確定な概念が完全に払拭されているとは言えません。
ただ、名古屋高裁判決では、「不相当に高額な部分の金額それ自体は、不確定概念であるものの、法の趣旨により、その意義を明確になしうるものであり、しかも政令によって定められた内容によって、その判断基準も客観的に明らかになっているものといえるから、憲法84条の課税要件明確主義に反するものではない。」としており、法人税法に規定する不相当に高額な部分の金額の概念は、不確定概念ではあるが、租税法律主義の内容である課税要件明確主義には、違背しないというのが判例の動向です。
このように不確定概念ではありますが、課税要件明確主義には違背しないものがたくさんあります。税理士は、「不確定概念」と「課税要件明確主義」の捉え方を誤ってはなりません。