12.年末調整

2020年分

1.ポイント

 今年の年末調整の改正事項は、下記以外にも細かいものを含めればとても多くなっています。考え方としては、

  •  所得者本人の給与収入額をベースに、
  •  配偶者(特別)控除を念頭に置き、
  •  それ以外の扶養関係を整理することです。

 これらを踏まえて、各種控除等を把握し、2020年の各控除申告書を正しく作り上げることが重要です。従業員の方が、今年の年末調整を理解して各種控除申告書を作成し会社に提出することはかなり難しいと思いますので、会社側(又は会計事務所)のチェックが重要になります。

2.給与所得控除と基礎控除

 給与所得控除は、今年から10万円引き下げられています。また、給与収入の上限額が1,000万円超から850万円超に引き下げられました。つまり、今年からは850万円を超えると給与所得控除額は195万円の頭打ちとなります(前年は220万円)。一方、基礎控除は引き上げられました。前年まで38万円でしたが、48万円になります。したがって、850万円以下の方は、所得控除は下がりますが、基礎控除が同額増えますので、所得税に与える影響はありません。ただ、年収が850万円を超えると、10万円以上の控除額の引下げとなりますので、実質的な増税となります。さらに、合計所得金額が2,500万円を超える所得者は基礎控除自体がなくなります

3.申告書様式

 上記2のような改正に伴い、給与支払者(会社等)に提出する書類が2つ新設されました。「基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」です。年末調整において、基礎控除と所得金額調整控除を受ける人は、その年の最後の給与を受ける前日までに会社に申告書を提出する必要があります。従来の配偶者控除申告書と兼ねる様式で、

「配偶者控除等申告書」と「基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」

が、1枚の申告書にまとめられています。基本的には、扶養控除等申告書と保険料控除申告書と合わせて3枚の申告書になります。多い人で3枚という意味で、3枚すべてを記載して提出しなければならないわけではありません。これらの適用を受けない人は提出する必要はないのです。また、これらに付随して、源泉徴収簿の様式も変更されているので注意が必要です。

 扶養控除等申告書を提出している人のうち、給与総額が2,000万円超の人は、年末調整を行わず確定申告で精算します。したがって、年末調整を行わない場合は、これらの申告書は不要です。ただし、2,000万円超の人でも、「甲欄」で源泉徴収している人は、給与所得者の扶養控除等申告書の提出は必要になります。

4.その他の主な改正

 「ひとり親控除」があります。生計を一にする子がおり、かつ、所得が500万円以下であり、事実婚の人がいなければ、35万円控除となります。この改正により、「特別の寡婦」に該当する場合の寡婦控除は廃止されていますので注意が必要です。また、通常の寡婦(寡夫)控除も適用要件が見直され、ひとり親に該当しない寡婦に係る寡婦控除に改組されました。寡夫控除はなくなり、男女差は設けなくなりました。