8.遺言書と異なる遺産分割
贈与課税の問題
相続開始時に遺言書があった場合、通常は遺言書通りに遺産を分割し申告書の作成をします。しかし、相続人間で遺言に納得がいかない場合には、遺言書の内容を無視して、相続人間で遺産分割協議を行い分割協議書を作成することもあります。ここで、遺言の内容と異なる分割協議について贈与税の問題が発生しないか気になるところです。
結論から申し上げますと、贈与税の問題は発生しません。相続人全員の協議で遺言書の内容と異なる遺産の分割をしたということは、包括受遺者である者が包括遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割協議が行われたとみます。したがって、原則として贈与税の課税は生じないこととなります。
ただし、被相続人が遺言で遺産分割を禁じている場合は、相続人全員の同意があっても遺産分割協議をすることができない場合がありますので注意が必要です(民法第908条)。遺言書は被相続人の最後の願いです。遺言書がある場合には、被相続人に帰属していた財産は、その者の願いを尊重し遺言書通りに分割することが望ましいと考えます。