5.みなし贈与

 親族間で不動産の売買をする場合の譲渡価額は、税務上特に注意が必要です。対価を支払わない譲渡は贈与になりますし、時価と比べて著しく低い価額で譲渡した場合も、その差額について譲渡者から譲受者への贈与とみなされてしまいます。

 ここで譲渡価額をどのように設定するかが問題となります。税務上は時価と比べて著しく低い価額の譲渡は、贈与とみなすとしています。単に低い価額としてないところがポイントです。所得税法上は、時価の1/2未満の価額を著しく低い価額としています。ところが法人税法上はそのような基準はありません。したがって同族会社が社長から不動産を譲り受ける場合は、この基準は当てはまりません。不動産の場合、時価とは通常の取引価額をいいます。つまり市場で取引されている価額ですが、親族間でこの価額を算定することは容易ではありませんし、不動産鑑定士に依頼しても費用がかかり、しかも納得のいく譲渡価額が決まりません。

 平成19年の東京地裁では、相続税評価額と同程度の価額かそれ以上の価額の対価によって譲渡が行われた場合は、著しく低い価額の対価とはいえないと判断しました。さらに、相続税評価額が時価の80%よりも低い場合は、著しく低い価額の対価になりうるともされました。これは地裁の判決ですので決定的ではありませんが、相続税評価額が1つの目安になると考えられます。また、固定資産税評価額も考慮して、税務上問題のない価額を設定することが重要です。