2.役員死亡退職金と弔慰金

 法人税法上は、役員に対する給与は報酬であっても退職金であっても不相当に高額な部分は損金算入が認められません。これは弔慰金でも同様です。ここで論点となるのが、不相当に高額でない退職金と弔慰金の違いです。相続税法上は、被相続人に対する役員死亡退職金は、相続人が相続によって取得したものとみなされます。また、所得税法上は非課税となり、死亡退職金に係る源泉所得税は徴収されません。

 一方、弔慰金はその性質上、社会通念上妥当であるとみなされれば、死亡退職金とは別個にその支払い時に損金算入することができ、所得税法上も非課税となります。ここで社会通念上妥当な金額が問題となりますが、相続税基本通達では被相続人の死亡が業務上の場合とそれ以外の場合とで明示されています。前者の場合は、普通給与の3年分に相当する金額、後者であれば死亡当時における普通給与の半年分としています。これらに該当すれば弔慰金は相続税の対象にはなりません。しかし、これは目安に過ぎず、その被相続人に対する弔慰金が社会通念上妥当であるとすれば、通達に規定する金額より多くても認められると考えます。

 役員死亡退職金であっても弔慰金であっても、死亡した役員に対する金銭の支給であることには変わりありません。相続税法上、死亡退職金は非課税の枠がありますが、税法上は、両者を区別しているため、死亡した役員に対する金銭が退職金に該当するのか、弔慰金に該当するのか、はっきりと区別しておく必要があります。このためにも、役員退職金規程を作成し、根拠のある金額と区分を明確にしておく必要があります。