1.債務免除益
同族会社においては、社長が会社に対して金銭を貸し付けている場合が少なくありません。会社の業績が良好で金銭を社長に返済できれば問題はありませんが、返済できない場合は社長からの借入金として会社側では負債計上されたままとなります。この借入金が多額になると会社の財政状態が悪化しているように見え、金融機関等からの融資も受けられません。また、社長に相続が発生した場合には、この借入金が相続財産となり返済の見込みがないにも関わらず相続税の負担が増加します。
そこで、社長は会社に対する貸付金債権を放棄することにより、会社の財政状態を良好なものにすると同時に相続財産も減少させます。会社側では、債務免除益を計上します。しかし、この債務免除益は会社にとっては収益となるため、法人税が発生します。そこで、税負担を軽減させるため、会社に繰越欠損金がある時に債務免除益を計上します。タイミングが重要です。
ここで、繰越欠損金の範囲内で債務免除をすることがポイントになりますが、税法上は貸倒れと異なり一部債務免除に対する規定はありません。したがって債権の一部のみ放棄することは可能であると思いますが、税務上問題とならないように、債務免除の目的と金額については根拠を明確にしておく必要があります。目的としては、「法人の資金繰りに窮し、これ以上財政状態を悪化させないために役員自らが債権放棄をした」、また金額の根拠としては、「借入金の推移等から判断し回収不能となる部分を推定した」などが考えられます。